IT革新の米国経済への影響:新古典派アプローチ

要 約
IT革新が1990年代の半ばから急速に普及し始めたとき、ITの米国経済への影響は小さいという議論がありました。その理由はIT資本ストックが他の資本ストックにくらべ非常に小さいからです。これは、エネルギー危機が最初に起こったときに、多くのエコノミストが犯した同じ間違いかもしれません。この講義ではITの経済成長への影響を正しく分析するために、IT資本ストックを明示的に含むコブダグラス生産関数を推定しました。このとき、推定されたコブダグラス生産関数から計算されるソロー残差は1990年代後半において上昇トレンドを示しました。この分析ではソロー残差(全要素生産性)をIT革新要素で説明したいことから、メモリーチップ価格の逆数を説明変数の一つとして使用しました。その結果、IT資本ストックは他の資本ストックに比べはるかに小さいものの、その経済成長への影響は非常に大きいことが理解できました。

この講義の後半では技術進歩がIT資本ストックと労働投入に体化したケースを分析しました。IT資本ストックに体化する技術進歩率はR&D支出が使われ、労働に体化する進歩率は労働者の教育年数が使われました。このケースにおいても、ITが経済成長に与える影響が非常に大きいことが理解できます。