ソローパラドックス

要 約
1987年のノーベル経済学受賞者であるMITのロバートソロー教授はその年に“どこにでもコンピューター時代を見るが、それが生産性の統計に表れていない”ということを言いました。これがソローパラドックス、あるいはソローの生産性パラドックスといわれるものです。ITが急速に普及し始めた1990年代の半ばにソローパラドックスが再び注目を集めました。すなわち、巨額なIT投資にもかかわらず統計に生産性の改善が現れなかったからです。IT革新がニューエコノミーをもたらすかどうかの鍵はソローパラドックスを解明することにあります。

最初に、ニューエコノミーを支持する人々と拒否する人々の考え方を紹介します。前者にはグローバルビジネスネットワークのピーターシュワルツ、USニュースの編集長のザカーマンなどがいます。一方、後者にクルーグマン教授、モルガンスタンレーのエコノミストであるスチーブローチなどがいます。

次に、ソローパラドックスを説明するために次の6つの仮説を調べてみます。1:コンピューターの資本ストックは他の資本ストックにくらべ相対的に非常に小さい。2:コンピューター投資は生産性の低い部門に投資されている。3:IT革新の効果は海外に現れ、米国の統計には現れにくい。4:IT革新が普及するまでには時間的ラグがある。5:コンピューターは考えられているほど効率的なものではない。6:ソローパラドックスなんて存在しない。